歴女やキャスラーが惹かれる、いにしえの石垣

先週末、私はJR東海道線で岐阜からのんびり京都へと向かっていました。

秋晴れの土曜日、紅葉にはまだ少し早いものの、ハイキングや観光に出掛ける人たちで車中は案外混雑しています。

ひときわ楽しそうだったのが、大垣で乗車してきた若い女性のグループ。

どうやら「歴女」と呼ばれる人たちのようで、戦国時代の話で盛り上がっていました。

「行先は関ケ原かな・・・?」と予想しましたが、会話の中から「石田光成」、「佐和山城」の名が聞こえてきます。

佐和山城?

確か、史跡は残されているけれど、天守はもちろん石垣というほどのものもなく

古い石がいくつかあるだけだったような・・・。

でも彼女たちは、互いのスマホ画像を覗きこみ「この苔の感じが・・・。」「ゾクゾクする!」と笑顔を見せながら、彦根から佐和山城を目指していきました。

武将や城、鎧、刀剣だけでなく、歴史ある石垣や往時をしのばせる古い石そのものに惹かれる歴女が増えているのを実感した出来事です。
石垣ブーム?

石垣ブーム、城跡ブームが一般に広がるきっかけは、「天空の城」として話題になった兵庫県の竹田城だと思います。

雲海に浮かぶように見える幻想的な風景がテレビ番組やCMに取り上げられ、知る人ぞ知る存在から、昨年は22万人以上の人々が訪れる観光名所へと変貌しました。

その後全国の城跡にも人気が広がり、旅行サイト「トリップアドバイザー」が発表した今年の「旅好きが選ぶ!日本の城」では

姫路城(兵庫)や二条城(京都)と並んで、天守をもたない岡城址(大分)、中城城跡(沖縄)、岩村城址(岐阜)、山中城址(静岡)などが上位にランクされています。

また、城巡りが趣味で、自らをキャスラーと称する文芸評論家の斎藤美奈子さんは

「普通の人が考える城はたぶん天守閣のことだろうが、天守は城のごく一部。キャスラーにとって建築物は、あれば嬉しいがなくてもいいくらいの位置づけだ。では何を見るかというと、筆頭はやはり石垣でしょう。」と語っています。

石垣・・・。

キャスラーにとってそれは城の美を演出する最高の構成物であり、土木技術の粋を集めた石の芸術、日本の城のアイデンティティといっていいぐらいの存在のようです。

竹田城はあまりにも有名になってしまったけれど、石垣が美しい城跡はまだほかにもたくさんあります。

中でも石垣推しキャスラー斎藤さんが薦めるのは

本丸から日本海までを一望できる村上城(新潟県)

岩盤に食い込む独特の石垣と木曽川の流れが印象的な苗木城(岐阜県)

壮大なスケールの津和野城(島根県)

凝った石垣が美しい米子城(鳥取県)

どこまでも続く山上の石垣群に目を見張る岡城(大分県)

本土とは異なる曲線状の石垣が空に映える勝連城(沖縄県)

などなど・・・。

どれも、石垣とともに眺望も素晴らしい名城とのことです。

思えば、江戸期から残る天守は弘前城や松本城、姫路城、犬山城、松江城など全国に12城しかありません。

他の多くは、戦後外観だけを復元したか、天守に模して建造された鉄筋コンクリート製。

史実にない天守や建物より、当時を伝える石垣、石群の方が歴史を感じ往時をしのぶのにふさわしいと思う人が増えたのかもしれません。

ある意味、本物志向の高まりなのでしょう。

石垣の危機、各地で劣化や崩落 

人気の一方で、天守が残る城も含め、石垣には危機も迫っています。

明治以降、石垣を補修する石工という職人さんが減り続けているのです。

保守管理が行き届かず、もろくなった石垣は災害で崩落する例も増えています。

近年の地震では熊本城が大打撃を受け、丸亀城は豪雨の際に石垣の一部が崩落しました。

対策が急がれます。

貴重な歴史遺産である城、城跡を後世に引き継ぐためにも、新しい技術を用いた補修をはじめ、若い石工の養成に国も力を注いでほしいと願います。

名古屋城では、コンクリート製の天守閣を木製に建て直す計画がありますが

天守を支える石垣の劣化も進んでいます。

名古屋の象徴とはいえ所詮レプリカの天守閣より、歴史的に価値の高い土台の石垣補修がまず先なのではないかと、考えてしまう私です。

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